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なぜ訴えるのか

近年、熱波や集中豪雨など気候変動の影響が顕在化し、安全な暮らしが危機にさらされつつあることを肌で感じるようになりました。

石炭火力発電所は化石燃料の中で最も多くCO2を排出し、気候変動の最大の要因の一つとなっています。
世界各国では石炭火力発電から脱却する動きが広がっていますが、日本はそれに逆行して現在でも多数の建設計画が進行しています。

その一つが横須賀火力発電所です。

稼働すれば、30年以上にわたって大量のCO2と大気汚染物質を排出します。しかもこの計画は、発電所が周囲の環境に及ぼす影響を調べて評価する手続き(環境アセスメント)を事業者が不当に簡略化したにもかかわらず、経産大臣がそれを認め、手続きを完了させてしまったものです。

もはや石炭の時代ではありません。計画を認めた国の責任は重大です。
「自分たちが安心して生活できる環境を守りたい」「その環境を子どもたちや孫たちへと受け継いでいきたい」
そんな当たり前の願いを叶えるため、市民がたたかっています。

国を訴える

(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機を建設・稼働する計画において、環境影響評価書の変更は必要ないとした経産大臣の通知の取り消しを求めています。

なぜ訴えるのか?

国は、以下の理由から計画を認めるべきではありませんでした。この裁判では国の対応の違法性を問うています。

◆パリ協定を達成するためには石炭火力発電所の新設が許されないから

気温上昇を2度未満に抑えようという目標を掲げた気候変動に関する国際的な枠組み「パリ協定」を達成するためには、2030年までに石炭火力から脱却することが必要です。これから新設することが許される状況ではありません。

◆環境アセスメントを簡略化したのは不当だから

発電所計画地にはもともと重油やガス(当初は石炭でしたが後に燃料転換)を燃料とする発電所が8基稼働していました。しかし2004年以降は、一部を除いて廃止または長期計画停止期間が続いていました。福島原発事故後に一部が稼働したものの2014年以降は再び全基停止状態へ。
新1・2号機計画を進めるにあたり、事業者であるJERAは、既設発電所の敷地内に建設され、CO2や大気汚染物質の排出量が低減する場合に環境アセスメントを簡略化を認める制度(「改善リプレイス」合理化ガイドライン)をもとに手続きを進め、環境アセスメントを通常の期間より1年以上も短縮しました。
しかし横須賀火力発電所はもともと全機停止していた、つまりCO2や汚染物質が全く排出されていなかった発電所です。そこに新たに発電所が稼働するので、CO2や大気汚染物質が低減するとは到底言えません。「改善リプレイス」には当てはまらず、環境アセスメントは不当に簡略化されたものです。

◆環境アセスメントで検討された内容が不十分だから

環境アセスメントでは、新たに建てられる発電所のCO2削減対策の中身とその評価に誤りがあります。初めから燃料を石炭とすることに決めていて、CO2や大気汚染物質の排出量が少ない他の燃料を検討していなかった点も重大な問題です。さらに発電所の稼働による大気汚染や、温排水の影響も十分ではありません。

提訴

2019年5月27日

発電所の概要

発電所近くには5km圏内だけでも多数の小中学校があるほか、医療施設やレジャー施設が点在しています。
しかし、発電所はすでに環境アセスメントの手続きを終え、2019年5月には建設の準備工事を開始しました。

事業者 株式会社JERA(東京電力と中部電力が50%ずつ出資)
燃料 石炭
設備容量 新1号機 65万kW
新2号機 65万kW
発電技術 超々臨界圧発電(USC)
炭素回収・貯留システム(CCS)なし
稼働予定 新1号機 2023年度稼働予定
新2号機 2024年度稼働予定
計画地 神奈川県横須賀市久里浜九丁目9番1号
CO2排出量 年間726万トン
(世界のエネルギー起源CO2の約5000分の1、日本のエネルギー起源CO2の0.64%、神奈川県のCO2排出量の約1割)