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2023年1月27日 東京地裁の不当判決に対しての声明を発表しました。

2023年1月30日

2023年1月27日東京地方裁判所にて一審の判決が出され、弁護団・原告団から声明を発表しました。

横須賀石炭火力発電所行政訴訟
東京地方裁判所判決についての原告・弁護団声明

2023年1月27日
横須賀石炭火力発電所行政訴訟原告団
横須賀石炭火力発電所行政訴訟弁護団

横須賀石炭火力発電所(以下「本件発電所」という)の建設及び操業に係る経済産業大臣の2018年11月30日付の環境影響評価適合通知の取消を求める行政訴訟(原告 鈴木陸郎ら48名、被告 国)について、本日(2023年1月27日)午後2時、東京地方裁判所は、原告らの請求を棄却する判決を下した。
本件発電所は、1960年代から創業してきた横須賀火力発電所(石油)が2000年以降順次操業を停止し、2013年には完全に停止し廃棄を待つばかりとなっていたところ、2015年に旧来の発電所を「改善リプレース」するものとして、建設・操業が計画された。
原告らは、温排水や温暖化による漁業被害、気候変動による豪雨の増加での土砂災害被害、熱中症の危険など、具体的な生命・健康・重要な生業といった重要な法的利益が侵害されている。
本件発電所の計画がされた2015年12月には、気候変動についてのパリ協定が締結され、世界の平均気温の上昇を産業革命前から2℃を十分に下回る水準に抑制し、1.5℃まで抑制することにも努力することが国際合意となった。大量の二酸化炭素を排出する石炭火力発電所をいかに削減していくかが国際的な課題となっている中で、新たに年間726万トンもの二酸化炭素を排出する本件発電所が計画された。
本件発電所を建設・操業開始するには適切に環境アセスメントを行う必要があったところ、本件環境アセスメントにおいては、「改善リプレース」合理化ガイドライン(2012年)等を適用して簡略化し、① 温室効果ガスの排出による環境影響について計画段階配慮事項に選定せず、② 温排水による重要な漁獲資源への影響などが実態調査されず、温排水による漁業への影響についての予測もされず、③ 大気汚染に関する現地調査が省かれ、日平均値・年平均値の予測が行われず、学校・病院などの影響が特に懸念される地点についての予測もおこなわれなかった。また、石炭と比較して二酸化炭素排出量が半減され、有害物質も大幅に削減される、天然ガス火力発電との比較など、発電燃料種についての代替案(複数案)検討もなされなかった。
しかるに、東京地方裁判所は、原告らの請求を棄却したが、以下の点で不当である。
第一に、本件原告についての地球温暖化の具体的な被害のおそれを認め、かつ、有害物質による大気汚染被害を受ける本件発電所から20km以内に居住し又は勤務する者について原告適格を肯定したものの、地球温暖化被害については、環境影響評価法及び電気事業法は、地球温暖化被害を受けるものの利益を特に保護するものでないとして、原告適格を否定した。
第二に、合理化ガイドラインの条件を満たすとして、有害物質による大気汚染被害及び温排水による被害についても、調査及び予測に欠けるところはないとし、PM2.5についての調査は不要とした。
第三に、地球温暖化についての環境アセスメントについても、石炭以外の燃料種との比較検討は不要であり、その影響の調査、予測、国の中期目標との整合性が図られていると整理するとした「局長級会議とりまとめ」(2013年)を根拠とした本件確定通知を適法とした。
日本の気候変動対策、とりわけ石炭火力では発電所新設を推進するなど、ヨーロッパ諸国に大きく遅れている。また、近年、ヨーロッパなどでは、パリ協定に定める温度目標の実現のための残余のカーボンバジェットの急激な減少を踏まえ、地球温暖化による被害を受ける個人の訴訟申立権を認め(オランダ及びアイルランド最高裁判所、ドイツ憲法訴訟及びフランス行政裁判所など)、政府に具体的でより厳格な削減目標や削減計画の策定などを求める判決が相次いでいる。今回の判決は、そうした世界の気候訴訟の潮流に大きく逆行し、気候変動による現実の切迫した生命・健康・重要な食料資源などの危機を直視せず、人権救済の砦としての裁判所の役割を放棄する、極めて不当な判決という他ない。
本件事業者は、本件発電所の操業開始によって多くの人々の生命と健康を危機にさらし、漁業の崩壊を招く本件発電所建設及び発電事業を中止すべきである。また、日本政府は、世界の人々を危機にさらす本件発電所を含む石炭火力発電所についての施策全般を見直し、石炭火力発電所の早急なる廃止を進めるべきである。

判決はこちら

声明(PDF)はこちら